若者を「囲い込む津山」ではなく、「戻りたくなる津山」へ

突然ですが、「18歳の谷」そして「30歳の丘」という言葉を聞いたことはありますか? これは正式な用語ではないので、人によって表現は異なるかもしれませんが、地方の人口動態を象徴する言葉です。

「18歳の谷」とは、進学や就職を機に18歳前後の若者が一斉に地元を離れてしまい、その世代の人口が「谷」のようにごっそり減ってしまう現象を指します。逆に「30歳の丘」とは、都市部などで就職し経験を積んだ人々が、子育てやキャリアチェンジを機に30代から40代で地元にUターンし、その世代以降の人口が「丘」のように増えている現象です。

今、多くの地方自治体では、この「18歳の谷」を解消すること、つまり若者の流出を防ぐことに躍起になっています。 地域内に進学先を誘致したり、地元企業への就職を強く斡旋したりといった施策です。

しかし、これは地方による「若者の囲い込み」ではないかと私は考えています。

若い人たちは、一度は地元を離れるべきというのが、私の基本的な考えです。都市部であれ、他の地域であれ、地元ではできない経験をし、多様な価値観や考え方に触れ、最先端の仕事のスキルを身につける。その経験は、本人にとっても、そして将来の地域にとっても役に立つものとなるでしょう。

私たちが目指すべきは、「若者を無理やり地元に留まらせること」ではありません。「一度地元から離れた人たちが、再び『帰ってきたい』と思えるような地元にすること」です。そのためには何が必要か。それは、彼らが外の世界で身につけたスキルを存分に発揮できるような、魅力的な就職先であり、その子どもたちが先進的・専門的な教育を受けられる環境であり、そして、安心して暮らせる充実した医療や福祉体制です。

もちろん、様々な事情で地元を離れられない人、あるいは地元に残って貢献したいと強く願う人も大勢います。 そうした人たちに対しても、外部と遜色のない先進的・専門的な教育の場や、やりがいのある魅力的な就職先を提供しなければいけません。

「若者の囲い込み」は、結局のところ、大人の都合で若者から「選択の自由」を奪うことになります。 あえて大袈裟な言い方を許してもらえるならば、これは人権侵害であり、最低の愚策です。

地方自治に求められるのは、この津山で頑張ってくれている人たちを全力で支援すること。 そして、外で新しい考え方やスキルを身につけた人たちが、「津山に帰りたい」「津山で挑戦したい」と思えるような魅力的な環境を整えること。この二つを両立させることが、これからの津山に本当に必要な政策だと、私は考えています。